シニアの英会話

まもなく東京オリンピック、というこの時期に、60代の友人が突如「英語を勉強して、東京オリンピックで観光ボランティアをしたい」と言い出しました。海外で暮らしたことがある私に、どうすれば早く英語が喋れるか教えろと言いだしました。

60歳過ぎてから英会話?と思うかもしれませんが、下手に自意識過剰の若い人より、もしかしたら上達が早いかも・・・と思っています。

そして、東京オリンピックが迫る中、友人と同じ考えのシニアの方も多いのではないかと思い、英語を早く上達させることについて、少し丁寧に書いてみようと思います。

外国に住めば誰でも英語が話せるようになる?

よく聞く話ですが、英語が日常的に使われる国に住めば、英語は話せるようになるのでしょうか?

「英語を話せるようになりたいから海外で暮らそうと思うけど、どう思いますか?」と聞かれれば、大いにおすすめします。

でも、実は海外でも、そんなに英語を使わなくても暮らせるんですよね。 スーパーやホームセンターなら、レジに並んで表示された金額を払うだけで、ほとんどの生活必需品は揃うし、体調を悪くしても大きな病院だと通訳がちゃんといたりします。

大抵の国には、日本人コミュニティーがあるので、そこで友達ができれば、友達頼みで結構旅行や外食も楽しめるし、トラブルにも対処してもらえます。実際そのように生活している日本人もいました。

20代前半で、旦那さんの移住に付き合って海外生活を始めた60歳を過ぎた女性など、もう海外生活のほうが長いのに、レストランで注文しても発音が悪いので違うものが来たり、電話の受け答えがやけに簡単だから「何だったの?」と聞けば、「何だかわからないから切っちゃった。大事な用ならまたかけてくるでしょ」と、留守番の役にも立たない始末。どうやって二人の子供を育てたのか謎です。

つまり、海外に住んでも、自分自身が英語を話せるようになりたいと思わない限り、大して上達しないのです。もちろん「英語を話せるようになりたい」という目標があって行く場合はかなりの上達が見込めると思います。積極的な意志がある場合に限って言えば「海外に住めば誰でも英語が上達する」という話は本当です。金銭的負担を考えなければ、間違いなくこれが一番の近道です。私自身、相当早かったという自覚があります。

日本に居ながらにして上達するには

語学を学ぶ環境としては、日本は最悪の国です。単一民族で、日本語以外の言葉は一切必要ないし、なんとなく暮らしていたら、外国の人と接点ができる、ということはあまりありませんよね。なので、頑張らないとなかなか身につかないと思います。

どう頑張ればいいのでしょうか。

一番大切なのはインプット(入れる)とアウトプット(出す)のバランスだと思います。

一人でコツコツ頑張ればインプットはどこでもできます。グーグル翻訳などでは発音も教えてくれますし、ハリウッド映画を見たり、洋楽を聞くのもいいですね。聞くだけの英語学習教材などもあります。コツコツ単語帳を覚えるのもいいことだと思います。

でも、アウトプットをどこでするのですか?

日本にはアウトプットの環境が少ないのです。覚えたことは使わないと、すぐ忘れるんです。英会話教室に行ったり、外国人コミュニティーでボランティアをしたり、とにかく、得た知識を吐き出す場所を探さないといけないのです。ここが頑張るところなんですね。

おすすめの学び方

金銭的に余裕があり、通える範囲に教室がある場合はマンツーマンの英会話教室が最強です。一番上達が早いはずです。本気で学ぶなら、多少高額でも3か月、とか1年とか期限を設けてみっちり学ぶことが大事ですよ。

グループレッスンは安いし、楽しいかもしれないけど、上達しにくいと思います。目的がみんな違うし、交代で話すから、自分が話せる時間が少ないでしょ? でも、英語が好き、という同じ価値観のお友達作りが目的のメインなら、グループレッスンはおすすめです。

それと、年齢を重ねてくると、一切日本語なしでの英会話教室は、かえって上達が遅くなるかもしれません。少なくとも疑問点が聞けるだけの英語力がつくまでは、日本語で質問できる環境があったほうがいいと思います。

セカンドベストだと思うのは、ネットを通して互いの顔を見ながらおしゃべりするタイプのオンライン英会話教室かな、と思います。教室に通うよりは安く、自分の都合のいい時間が選べて、近くに教室がなくてもこれなら大丈夫。肉声でなくなることで、聞き取りにくくなる難点があるかもしれません。

人って、言葉だけじゃなく、表情やボディランゲージでも会話しているので、相手が見えない電話や、文字を交換するチャット英会話はおすすすめできません。

確実に上達したい方は、期限を決めてマンツーマンの教室に通い、しっかり基礎を身に着けてから、その後オンライン教室に切り替えるのが、コスト的には最善だと思います。

何しろ、アウトプットの回数が増やせる方法がベストです。

そんなお金はない、という場合は外国人客が多いところでアルバイトやボランティアをする、国際交流関係の団体の活動に参加するなど、いろいろあります。料金はかからないけど、探すことや毎日のように続けることはなかなか難しい場合もあるし、こういうところでは間違いを指摘してくれる人はいません。なので、英会話教室などと組み合わせて、なるべく毎日に近い頻度で英語に触れることが、上達への近道だと思います。

それと、先生を選べるのなら、聞き取りに自信がない場合、女性をおすすめします。アナウンサーに女性が多いことからも何か関係があると思うんですが、女性の英語のほうが聞き取りやすいですよ。

英会話を学ぶ意味

日常会話って、実はそんなに難しい文法や言葉がなくても伝わるんですね。もちろん、もっとネイティブらしい言い回しや、シーンによる使い分け、もっと高級な単語を、など欲を言えばきりはないのでしょうが、一番大事なことは互いの意思疎通ができたか、ということに尽きると思います。だって、言葉ってそのためにあるわけでしょう?

価値観の違う外国の人といろんな話ができると、新しい発見の連続で、とても楽しいと思います。海外旅行に行っても民泊の受け入れをするにしても、言葉がわかるとわからないでは楽しみの幅も大きく違います。皆さん、こういうことが最終目的なんじゃないですか? 英語を話せるようになるのが最終目的ではないですよね? 英語を使って何かをすることが目的なはずです。

学校や英会話スクールでは間違いは正してもらえるけど、実際の社会では、いちいちそんなことを気にする人はいません。 外国の方に「トーキョタワーにいきたいデース。 エキがしらないですネー。どうしますかー?」などと聞かれたら、皆さんはどうしますか?「あ、東京タワーに行きたいけど、駅がわからないのね?」と理解できると思います。理解する努力をすると思います。正しい日本語ではないから無視しますか?間違いを指摘し、正しますか? しませんよね。会話は双方向性なので、話しかけられれば、受け手もちゃんと意思の疎通に参加するはずです。

白人や黒人が少し日本語を話せば「あら、すごい、日本語話せるの?」と思うでしょう? どう見てもアジア人の顔をしている私たちに、外国の方も完璧な英語力を期待していませんから、大丈夫です。

仕事できちんとした英語が必要な場合を除けば、ちゃんと意味が伝わるレベルで十分、という気持ちでスタートすればいいと思うのです。

正確な文法より、意味が通じる英語

もたもたと頭の中で文法を組み立ててから話し始めていると「会話」は成り立たず、実社会では相手にしてもらえません。間違っていてもいい、意味さえ伝わればいいからさっさと話す、ということが最重要になります。正しい話し方は、インプットとアウトプットを繰り返していくうちに身につくから心配はいりませんから。

英会話教室などでも同じです。

さっさと話す→細かい文法を間違える→先生に直される→言い直す→使える

これを繰り返すことが一番の近道だと思います。たくさん話し、たくさん間違えることが英会話教室の価値ある使い方です。

「世界の果てまで行ってQ」という番組で、お笑い芸人の出川哲郎さんが、アメリカで「○○博物館で××を買ってくる」などのミッションを与えられ、見知らぬ場所に放り出されるコーナーがありますが、ご存知でしょうか? 出川イングリッシュと呼ばれるデタラメな英語で、毎回ちゃんとミッションをクリアしていくのは大したものだと感心します。でも、意思の疎通ができているから、目的が達成できるんですよね。ある意味、正しい「会話」のあり方だと思います。

英語を話せるようになりたい方が、まずしなければいけないのは出川さんの真似だと思います。デタラメでもとにかく何か言ってみるって、すごく大事です。

あとはなるべく毎日触れることだと思います。相手がいない時には独り言でもいいから声に出して英語を話すことはとても大事です。

特に中年以降になると、新しいことを覚えるのが苦手になったと感じる人もいると思います。繰り返すことで、道は踏み固められ、だんだん歩きやすくなります。繰り返しや、いつも触れているというのはとても重要になってきます。 歩くのをやめると、通いなれた道でもすぐに草ボーボーになりますよ。

どうせ自分が一番下手なんだから、と開き直り、どんどん話し、よく聞き、質問するのが上達のコツだと思います。

60歳を過ぎて英語を始めるという友人は、はなから「どうせどこへ行っても自分が一番下手」と思っていますから、きっと文法が間違っていようが何だろうが平気だと思います。目標もはっきりしているし、人生、残された時間のほうが少ないのも承知しているので時間を大切にします。さらに、口にガムテープを貼られてもしゃべりたい性格。歌もうまい。話好きと歌うまは、語学を習うには最強の武器です。

半年後には英語でおしゃべりが楽しめそうなので、私ももう一度勉強し直そうかな、と思案中です。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする